
定地燃費値とWMTCモード値、 カタログに載ってる二種類の燃費は何が違うの?
バイク選びの基準として注目される「燃費」ですが、カタログに記載されている燃料消費率には複数の測定方法があり、それぞれ特徴が異なります。
では、バイクのカタログに記載されている2つの燃費には、どのような違いがあるのでしょうか。
「定地燃費値」と「WMTCモード値」の違い

ガソリン価格の高騰が話題になって以降、燃費を気にするライダーは増えています。バイクを購入する際に、カタログ燃費を判断材料にする人も少なくありません。
実はこの「カタログ燃費」には、「定地燃費値」と「WMTCモード値」という別の方法で測定された2種類の数値が記載されています。
では、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。
定地燃費値
まず、定地燃費値は、バイクを一定の速度で走らせたときの燃費を実測した数値で、国土交通省に届け出る正式なデータです。
アクセル操作や交通状況の影響が少ないため、数値がよく出やすい傾向があります。ただし、実際の走行環境とは異なるため、日常の「実燃費」とは差が生じることがあります。
WMTCモード値
WMTCモード値は国際基準に基づく燃費測定で、実際の使用状況に似た状況での試験で導かれる、より実燃費に近い数値です。
この数値は、国連自動車基準調和世界フォーラムで定められた排出ガス試験法(WMTCモード試験法)に関するGTR(世界統一基準)にもとづき、シャーシダイナモ上で走行し、その際に排出されたガス量を測定し、算出されるものです。
WMTCモード試験法では、実際の使用環境に近い多様な走行パターンが組み込まれており、アイドリングから発進、加速、巡航、減速、停止といった一連の流れが再現されています。
そのため、この試験方法で得られる「WMTCモード値」は、従来の一定速度で走行する定地測定法と比べ、より使用実態に即した実燃費に近い燃費指標として位置づけられています。
燃費基準の変化
日本では、以前は国交省への届出にも用いられる定地測定法による燃費がカタログ表記の中心でした。
しかし、より実際の走行環境に近い燃費指標が求められたことから、2013年7月以降、一般社団法人日本自動車工業会に加盟するカワサキ、スズキ、ホンダ、ヤマハが、自主的な取り組みとしてWMTCモード値の併記を順次開始しました。
このように、現在ではWMTCモード値も重要な指標としてカタログに記載されることが多くなりました。
実燃費をよくしたいときにライダーができること

このように、カタログ燃費には測定方法による違いがありますが、実際の燃費はライダーの運転や車両の状態によっても大きく変わります。
そのため、燃費を改善したいときは、日常の走り方や車両のコンディションを見直すことが効果的です。
では、具体的にどのような点に気をつけるとよいのでしょうか。
走行時
まず、走行時の急加速は瞬間的に燃料を多く消費し、燃費悪化につながります。燃費をよくしたいときは急加速を避けましょう。
また、赤信号などの停止箇所を早めに把握し、急ブレーキではなくアクセルオフでエンジンブレーキを使いながら減速することで、燃料消費を抑えることができます。
つまり、運転の際に急な動作を避けることが、燃費改善につながります。
そして、高速道路やバイパスなどでの巡航時には、一つの速度をできるだけ維持することで無駄な加減速が減り、結果として燃費向上が期待できます。
ただし、いうまでもなく道路では安全が最も優先されます。
何かに衝突しそうになったときなどは急停止が必要なほか、一定速度での巡航時も前の車両との車間距離が詰まれば減速が必要です。
燃費を重視した運転は、安全を確保したうえで行う必要があります。
点検整備
走り方に気をつけるほかに、適切にバイクを点検することで燃費が改善することもあります。
たとえば、タイヤは燃費に影響する要素のひとつです。
すり減ったタイヤはエンジンの力を路面に効率よく送ることが難しくなるため燃費の悪化につながることがあります。
とくに、スリップサインが露出するほどすり減ったタイヤは燃費が悪くなるだけでなく、タイヤ周りの水はけが悪くなることでスリップ事故にもつながりかねないため、安全面からも交換しなければなりません。
また、適切な状態のタイヤを装着している場合でも、空気圧が適正でない場合は転がり抵抗が増えて燃費が悪化することがあるため、燃費向上のためにはタイヤの適切な空気圧管理が求められます。
そのほか、エンジンオイル量の維持、プラグの点検、エアクリーナーの清掃などを行うことで、エンジンが効率的に作動しやすくなり、結果として燃費改善につながることがあります。
まとめ
このように、カタログの燃費には大きく分けて定地燃費値とWMTCモード値の2種類があり、バイク選びでは、2つの燃費指標の特徴を押さえておくと比較しやすくなります。
また、実燃費はカタログ燃費だけでなく、バイクの扱い方や整備状態によって左右されます。
そのため、燃費の悪さが気になる場合は、乗り方や車両のコンディションを見直すことで、より効率的に走行できる可能性があるため、運転の振り返りやバイクの点検を検討してもよいかもしれません。








