バイクの売却と同時に免許も返納……車を残してバイクだけ返納することは可能?
高齢化社会になり、生活スタイルも変化したことにより運転免許の返納を考える人が増えています。
特にバイクに関しては、維持費や安全面の懸念から返納を検討する方も少なくありません。
しかし、「バイクの免許だけを返納して車の免許は残したい」と考える方もいるでしょう。
果たして、そのような部分的な免許返納は可能なのでしょうか?
本記事では、バイクの免許返納に関する様々な選択肢と、その手続きについて詳しく解説していきます。
免許返納を考えている方はもちろん、将来的な選択肢として知っておきたい方にも役立つ情
報をお届けします。
目次
運転免許の返納件数は年々増えてきている
運転免許の自主返納制度は、道路交通法の改正により2002年に導入されました。
以来、返納件数は年々増加傾向にありましたが、直近では減少しています。
2011年:約13万件
2015年:約42万件
2019年:約60万件
2023年:約38万件
この推移には以下のような原因が考えられます。
・高齢ドライバーによる事故の増加
自身の運転能力に不安を感じる高齢者が、少子高齢化により増えています。
また、メディアで報道される高齢ドライバーの事故により、社会的な関心が高まっています。
池袋で高齢ドライバーが母子をはねて死亡させた事故が起きた2019年には、約60万件の返納がありました。
・返納後のサポート制度の充実
多くの自治体やタクシー会社、商業施設などが、運転経歴証明書を持つ人向けの割引サービスを提供しています。
これらの優遇措置が、返納を検討する際のインセンティブとなっています。
・社会的な意識の変化
「カーシェアリング」や「ライドシェア」など、車を所有しない生活スタイルが浸透しつつあります。
環境への配慮から、自動車の使用を控える傾向も見られます。
・地方部での公共交通機関の撤退
人口が少なく高齢化の進む地方では、営業利益の関係から公共交通機関が撤退することが多くなりました。
特にコロナ以後に顕著になったその傾向により、生活のため免許の返納ができない人も増えたのでしょう。
このように、運転免許の返納はさまざまな社会的要因と密接な関わりがあるのです。
車の免許とバイクの免許、一方を残してもう一方を返納することも可能?
結論から言えば、車の免許を残してバイクの免許だけを返納すること(またはその逆)は可能です。
これは「一部取り消し」と呼ばれる手続きによって実現できます。
①一部取り消しの主なケース
・普通自動車免許は残し、二輪免許(原付を含む)のみを返納
バイクの運転に不安を感じるが、車は必要という方に適しています。
・二輪免許は残し、普通自動車免許のみを返納
車の運転は控えたいが、手軽な移動手段としてバイクは使いたい場合に選択されます。
・大型免許や中型免許を返納し、普通免許のみを残す
大型車の運転機会がなくなったが、普通車は必要という方におすすめです。
②一部取り消しの手続き
手続きは最寄りの警察署や運転免許センターで行うことができます。
必要書類は以下の通りです。
・運転免許証
・本人確認書類(マイナンバーカード、パスポートなど)
・申請書(窓口で記入)
また、実際の手続きの流れは以下の通りです。
・窓口で申請書を記入
・必要書類を提出
・係員による確認
・新しい免許証の発行(残す免許の種類のみが記載されたもの)
人それぞれに合った柔軟な対応が取れる一部取り消しですが、注意点もあります。
1つ目は、再取得の際の試験義務です。
一部取り消しを行うと、返納した免許の種類については再取得する際に、再度学科試験と技能試験を受ける必要があります。
2つ目は、優遇措置の適用が限定されてしまう可能性です。
一部取り消しの場合、全ての免許を返納した場合と異なり、免許返納による優遇措置が受けられません。
また、身分証明書として広く使用されている免許証ですが、一部取り消しを行っても残った免許証で身分証明は可能です。
大型二輪を普通二輪、普通二輪を原付などに条件変更することもできる
免許の完全な返納ではなく、より小さな排気量のバイクに乗り換えたい場合は、「条件変更」という手続きを利用できます。
これは、現在の免許の範囲を縮小する形で変更を行うものです。
主な条件変更のパターン
大型二輪 → 普通二輪
排気量400cc超の大型バイクから、400cc以下の中型バイクへの変更した場合
普通二輪 → 普通二輪(小型限定)(排気量125cc以下)
中型バイクから、より小さな排気量のバイクへの変更した場合
普通二輪(小型限定) → 原付(排気量50cc以下)
条件変更のメリットは以下のように数点あります。
1つ目は、運転負担の軽減ができることです。
より小さな排気量のバイクに乗り換えることで、操作の難易度が下がり、運転の負担が軽減されます。
2つ目は、将来的な復帰の容易さです。
条件を厳しくする変更の場合、将来的に元の免許に戻すことも可能です(再度試験は不要)。
3つ目は、維持費の削減ができることです。
小さな排気量のバイクに変更することで、燃料費や保険料、税金などの維持費を抑えることができます。
それでは、条件変更の手続きについて説明していきます。
手続きは一部取り消しと同様に、警察署や運転免許センターで行えます。
必要書類も基本的に同じですが、以下の点には注意が必要です。
・新しい免許証の交付手数料が必要
・写真が必要(その場で撮影できる場合が多い)
・視力検査を行う場合がある
手続きの流れは以下の通りです。
・窓口で申請書を記入
・必要書類を提出
・視力検査(必要な場合)
・写真撮影
・新しい免許証の発行
もちろん、条件を緩和する方向(例:原付から普通二輪へ)の変更はできません。
その場合は、改めて試験を受ける必要があります。
また、都道府県によって、手続きの詳細や必要書類が若干異なる場合があります。
事前に自治体免許センターのホームページ等で確認することをおすすめします。
一部取り消しや条件変更の場合、運転経歴証明書を交付してもらうことはできない
運転経歴証明書は、全ての運転免許を自主返納した場合にのみ交付される身分証明書です。
一部取り消しや条件変更の場合は、まだ何らかの運転免許を保持しているため、運転経歴証明書の交付を受けることはできません。
運転経歴証明書のメリットは以下の通りです。
1つ目は、公的な身分証明書として使用可能であることです。
金融機関での口座開設や携帯電話の契約など、様々な場面で身分証明書として使用できます。
2つ目は、多くの自治体やサービスでの優遇措置を受けられることです。
タクシーやバスの割引や商業施設での割引やポイント付与、公共施設の利用料割引、宅配サービスの割引等が実施されています。
3つ目は、有効期限がないことです。
通常の免許証とは異なり、更新の必要がありません。
まとめ
バイク免許の扱いを検討する際には、完全返納、一部取り消し、条件変更など、様々な選択肢があることがわかりました。
各メリットデメリットを考慮した上で、1番自分に合う方法を選ぶとよいでしょう。