
査定額の引き上げには、オーバーホールとフルレストアのどっちがよいの?
バイクの大規模な整備には「オーバーホール」と「フルレストア」があります。
どちらもバイクの状態を整える整備であり、売却時に査定をできるだけ上げたいオーナーのなかには、売却前の愛車にどちらかの整備を受けさせるか悩む人もいるかもしれません。
では、愛車の売却を考えるとき、査定を上げるにはどちらの整備をおこなうとよいのでしょうか。
目次
オーバーホールはバイクの機械の整備、フルレストアはバイク全体の整備

バイクの整備には、「オーバーホール」と「フルレストア」という方法があります。これらはどちらもバイクの状態を整えるための手法ですが、内容が異なります。
オーバーホールはバイクの機械部分の整備
オーバーホールは、バイクの機械部分の経年劣化や部品の摩耗を軽減するための整備です。
この整備では、バイクのエンジンや足回り、駆動系などの重要な機械部分を分解、清掃し、場合によっては劣化した部品を交換することで、バイクの性能を回復させます。
これにより、オーバーホール前の状態にもよりますが、パワーが増したり、動作が滑らかになるなど、バイクの機械的な動作が改善されることが期待できます。
しかし、オーバーホールはあくまで機械部分に焦点を当て、バイクの走行性能を向上させることを目的としているため、内外装はあまり変化しない場合が多いです。
このようなオーバーホールは、内外装には劣化が見られないが、長距離を走行したり、機械に不調が見られるバイクに施されることが多いといえます。
フルレストアは機械や内外装など、バイク全体の整備
オーバーホールは、先述の通りバイクの機械部分に焦点を当てた整備です。
では、バイクの機械部分だけでなく、内外装などにも劣化が見られる場合はどのような整備が有効なのでしょうか。
そのような場合に有効なのが、フルレストアです。これは機械部分だけでなく、バイク全体を修復する作業です。
フルレストアでは、エンジンや足回りだけでなく、タンクやフレーム、塗装なども修復や交換の対象となります。
これにより、見た目が美しく復元されるだけでなく、バイクの性能も回復することが多いです。
フルレストアは諸刃の剣?
フルレストアの主なメリットは、バイク全体を修復することで、見た目が新品同様に復元される点です。外装の劣化が目立つ場合や、見た目が重要視される場合に最適です。
特に、旧車やコレクターズアイテムとして価値のあるバイクの場合、フルレストアをおこなうことで、その価値を最大限に引き出すことができます。
フルレストア後のバイクは、外観の美しさや状態が大きく改善され、査定において有利に働くことがあります。
しかし、フルレストアにはデメリットも存在します。
まず、時間と費用が大きくかかります。フルレストアでは部品の清掃などだけではなく、交換の必要がある場合が多いです。
そのため、交換部品を購入する必要があり、費用がかかることがあります。とくに、廃盤になった部品の調達は困難を極めることが予想できます。
それだけではなく、単純な修理よりも修復する部分が広いため、工賃が高くなるだけでなく、作業が長期間にわたることが考えられます。
また、フルレストアには特殊な技術が求められることもあり、これも工賃が上がる一因になりえます。
そして、もうひとつの大きなデメリットは、塗装などが劣化したり、不自然になってしまうおそれがあることです。
フルレストアでは外装の修復の一環として、再塗装がおこなわれることがあります。
この再塗装のとき、もともとバイクに使われていた塗料が手に入らないなどの事情があると、現代にある別の塗料によって再塗装をおこなう必要があります。
このような塗装の結果、旧車にもかかわらず不自然にピカピカな仕上げになってしまうことがあります。
また、再塗装という工程によって塗装の質や耐久性が落ちてしまうことにも注意が必要です。
このように、フルレストアがうまくいけば「年式の割には内外装がきれいで走りもよいバイク」を作り出すことができるといえます。
しかし、うまくいかなければ「費用と時間を費やした結果の、微妙な外装のバイク」を生み出すこともあります。
つまり、フルレストアはまさに「諸刃の剣」といえます。
査定に出すまえ、オーバーホールとフルレストアどっちをおこなうべき?

では、査定の前にしたほうがよい整備は、オーバーホールとフルレストアのどちらなのでしょうか。
多くの場合はオーバーホールにとどめるのが無難
実のところ、売却前の整備はフルレストアではなく、オーバーホールにとどめるのが無難といえます。
なぜなら、フルレストアは査定のときに必ずしも評価されるとは限らないためです。
上述の通り、フルレストアでは塗装の劣化や塗装が不自然になるおそれがあります。
そして、この点が理由で査定を低くされる可能性があります。
このようなリスクがある一方、フルレストアには多額の費用と時間がかかります。
そのため、費用や時間を費やしてフルレストアをおこなっても、その分査定が高くなるどころか、査定が落ちるおそれもあるといえます。
以上より、査定前にフルレストアをおこなうのはあまり得策ではないかもしれません。
ただし、価値は高いが状態の悪い旧車など、個体によってはフルレストアによって査定が上がることがあります。
このようなフルレストアと比べ、オーバーホールが査定に悪影響を及ぼすことは少ないといえます。
オーバーホールによって操作やエンジンの回転などが滑らかになると、バイクの状態が良好であるという評価につながることが考えられます。
この評価は、査定のアップにつながることがあるため、査定前のオーバーホールは査定によい影響を与えることがあるといえます。
査定前の整備は、あえて「しない」という選択肢もある
査定前にオーバーホールやフルレストアをおこなうことは、確かにバイクの状態を向上させ、査定額に良い影響を与える可能性があります。
しかし、オーバーホールやフルレストアをおこなわない選択肢も考慮すべきかもしれません。
まず、オーバーホールなどの整備にかかった費用が査定のときに上乗せされるとは限りません。
とくに、不調がささいなものだった場合などは、それを改善したとしても査定で上がる金額が少なく、整備にかかる費用の方が多くなるおそれがあります。
そのような場合など、査定前はあえて整備しない方が得になることがあります。
このほか、オリジナルの状態を保っている方が評価されることもあるため、整備をおこなわないことが最適な選択肢になることもあります。
まとめ
このように、オーバーホールやフルレストアを施す前に、どのような整備が最適かをよく考えることが重要です。
整備をしないという選択肢も含めて、愛車の価値を最大限に引き出すためには慎重な判断が求められるといえます。