
今年から普通免許で125cc原付に乗れるわけじゃない!「新基準原付」について
2025年11月に適用される排出ガス規制を背景に導入が進められている「新基準原付」は、排出ガス規制の見直しにあわせて導入される新しい車両区分です。
この新基準では、一部の125ccバイクが原付一種として扱われるようになりました。
では、この「新基準原付」はどのような存在なのでしょうか。
「新基準原付」とは

2024年3月31日まで、第一種原動機付自転車(以下、原付一種)は、総排気量50cc以下の車両が対象でした。
この原付一種は取得が容易な原付免許のほか、けん引免許や小型特殊免許を除く車両区分の免許、つまり普通免許などでも運転できるため、多くの場面で移動手段として活躍しています。
しかし、2025年11月から適用される環境対策の厳格化により、50cc原付は新たな排出ガス基準に対応するのが難しくなりました。
このため、政府は制度を見直し、排気量の上限を引き上げた「新基準原付」を導入しました。
新基準によって新たに原付として扱われるのは、総排気量が125cc以下かつ最高出力が4.0kW以下のバイクです。
この範囲の車両は、従来の原付と同じく原付免許や自動車免許、二輪免許で運転できます。
また、型式認定時には「総排気量」と「最高出力」を表示することが義務化されるため、購入時に確認が可能です。
なぜ原付に新基準が求められたのか
背景にあるのは、環境対策の国際的な強化です。
環境省と国土交通省は、中央環境審議会の第13次答申において大気環境保全及び国際基準調和を目的とした規制の導入が推進されたことを受け、2019年2月15日に「ガソリン直噴車及び二輪車等の排出ガス規制を強化する告示」を公表しました。
この改正により、特に二輪車に関しては、市街地や郊外、高速走行を平均的に組み合わせた国際的な走行モード「WMTCモード」での排出量基準が従来より厳しく設定されています。
また、アイドリング時の一酸化炭素(CO)排出量、燃料蒸発ガスの抑制値も引き上げられ、エンジン構造や燃料系統に高いクリーン性能が求められるようになりました。
この新たな排ガス基準は、新型車には2020年12月から、継続生産車には2022年11月から段階的に適用が始まっており、50ccクラスの第一種原動機付自転車については、2025年11月からの適用が開始されます。
つまり、2025年11月以降に販売される原付一種は、この強化された排出ガス基準に適合しなければなりません。
しかし、メーカー各社によると、50ccエンジンではこの基準を満たすことが技術的・コスト的に困難であり、生産継続が難しいとされています。
こうした状況を踏まえ、警察庁と国土交通省は「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会」を設置し、原付一種の基準を拡大することを決定しました。
つまり、「新基準原付」は、環境基準強化によって消滅しかねなかった50cc原付を、よりクリーンで実用的な形で存続させるための制度です。
環境負荷を低減しつつ、一般ユーザーが引き続き普通免許などで利用できる「新しい原付」として再構築されたといえます。
「新基準原付」の注意点

このように、新基準原付の導入は環境対策と実用性を両立させるための制度改正ですが、仕組みが複雑なため誤解されることも少なくありません。
では、この新しい区分で特に気を付けるべき点はどこでしょうか。
125ccのバイク全てが原付一種になるわけではない
今回の制度改正は、「普通免許で125ccに乗れるようになる」という内容ではありません。
あくまで、出力制限が加えられた排気量125cc以下の車両が「原付一種」として扱われるようになる、という点が重要です。
つまり、現在販売されている一般的な125ccバイクがすべて新基準原付に含まれるわけではありません。
従来の原付二種モデルはあくまで「第二種原動機付自転車」のままであり、運転するには原付免許ではなく普通二輪免許や、その小型限定免許が必要となります。
交通規則はもともとの原付一種と同じ
新基準原付は、走行時の交通ルールも従来の原付一種と同じ扱いになります。
つまり最高速度は30km/hに制限され、小さな交差点での二段階右折が必要です。
また、当然ですが二人乗りは禁止されています。
ナンバープレートの色も、これまでの原付一種と同様に「白地・フチなし」となります。
このように、新基準原付は「125ccに乗れるようになる」制度ではなく、「基準を満たした車両が原付として扱われる」制度である点を誤解しないことが重要です。
運転時のルールも変わらないため、従来の原付と同じ感覚で扱う必要があります。
まとめ
「新基準原付」は、環境規制により生産が難しくなった50cc原付の代替として導入された新しい区分です。
排気量125cc以下・出力4.0kW以下の車両が対象で、原付免許や自動車免許、二輪免許で運転できますが、すべての125ccバイクが該当するわけではありません。
また、交通ルールは従来の原付と同じで、速度制限や二段階右折なども変わりません。
そして、2025年11月の排ガス規制適用に向けて、今後は各メーカーから「新基準原付」対応モデルの登場が見込まれます。
最近では、ホンダから新基準に対応した“排気量125cc以下枠”の原付一種として、「ディオ110 ライト」が発表されました。
多くの人の移動手段として定着している原付一種の今後に注目です。








